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茶碗を削りながら・・

  • 執筆者の写真: Goh
    Goh
  • 6月19日
  • 読了時間: 2分

更新日:6月20日

茶碗の高台を削りながら、突然イヤホンから面白い短歌が聞こえてきた。思わず手を止めて聞き入ってしまった。「正月は 冥土旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」


玄関の柱に取り付けてある外気温計は32度を示している。本格的な夏はまだ先だというのに昨日に続いて今日もとんでもない暑さになっている。つい先日までの庭の草木の優しい緑は、すでに真夏の太陽に負けまいと一層緑を濃くしているように見える。正月はまだまだ先のことだと思っているが、おそらく正月を迎えたときにはあっと言う間の時の流れにおどろいていることになるのだろう。


正月も誕生日も新しく迎える年に、一つ重ねた新しい年齢に感謝し祝福の言葉を贈る。祝ってもらうことに心から感謝しつつ、内心、また一つ重ねてしまうか・・とかすかに落胆もするのだが、一休禅師の「冥土旅の一里塚」という納得のいく言葉に思わず一人にやりとしてしまう。


2日前に大学からの古い付き合いの友人から「先ほどザグレブ上空を通過しました」というメールが届いた。定年退職後は時間の許すかぎり国内外を問わず旅行を楽しんでいる。こちらは放浪よりも定住に価値を見出している。畑で野菜を育て、粘土をこねて轆轤を回し、木を削りオルガンを作っている。そんな生活はもう7,8年続いているが、何も変わらないかのように過ぎる時の中で、身近な社会の変化や自身の内的変化は確実あるし、1年毎に冥土旅に近づいていることになる。茶碗を削りながらそんなことを考えてしまった。

 
 
 

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