ポルタティフ・オルガン制作

 

ポルタティフ・オルガン制作のワークショップが、2018年5月に説明会、6月から作業を開始して、2021年6月27日で終了しました。やく3年かかったことになりますが。当初1年で完成の予定でしたが、木工などほとんど経験のない方々が、自宅での作業をなしに月2回の作業だけでよくここまで頑張ってこられました。楽器としてもオブジェとして見ても十分に美しいオルガンを完成させた皆さんに拍手です!工房通信でも紹介してありますので御覧ください。

ポルタティフオルガン製作についての問い合わせも頂いています。現在2回めのワークショップについて計画中です。詳細は後日。

ポルタティフオルガンについて

​オルガンの歴史はとても古く、紀元前数百年に葦でできた笛を束ねて吹く形のものから始まり、フイゴを使ったオルガンは紀元前1世紀にはあったという説があります。ポルタティフ・オルガンは片手でフイゴを押し、片手で演奏する持ち運び可能な小型のオルガンで、イタリアではオルガネットとも呼ばれていました。音楽の進化に伴い音域も広くなり複雑な和音が演奏されるようになるとポジティフオルガン(据え置き型)が普及し、建物と一体化したパイプオルガンは13世紀には登場しました。

ポルタティフ・オルガンは鍵盤で演奏するオルガンとしては初期のオルガンですが、多くの絵画や彫刻も登場しその時代には社会に浸透した楽器であることがわかります。ヨーロッパ中世の音楽は現在はなかなか聴く機会がありませんが、その時代の音楽を演奏するにはまさに素朴で温かい音を奏でるなくてはならない楽器です。

パイプの素材について

​私の作ったポルタティフオルガンのパイプは木で出来ています。現代は様々な種類の木の板がホームセンターなど身近な所で簡単に手に入ります。板が安く簡単に手に入るのが当たり前過ぎてなかなか理解しにくいのですが、中世の時代に板、特に5ミリ程の薄く加工した板を大量に手に入れるには相当に大変だったのではないでしょうか。電動の道具のない時代に薄く、広い面積を板状にするのはたいへんな労力と時間を要したと思います。

2月に神奈川県藤野にある「横田宗隆オルガン制作研究所」で、鉛と錫の合金でパイプオルガンに使う金属板を作る様子を見る機会がありました。それはまさに中世から行われてきた道具と製造法で、硅砂の床に350℃弱で溶かした鉛と錫を木枠に入れて動かすという簡単な方法でした。長年スエーデンの大学でオルガンの制作と研究をされた横田宗隆さんが様々な文献から当時の制作方法を再現されたということですが、その作業風景は中世の街の工房で数人の職人たちの手作業で行われていたことが容易に想像できる内容のものでした。

中世の時代の教会の彫刻、多くの写本やテンペラ画などにポルタティフオルガンが多く登場しますが、ほとんど全てが丸い形状したもの、つまり木ではなく金属板で製造されたものだと思われます。横田宗隆さんにそのことを尋ねると「そう言われてみるとそうだ。私も木で作られている絵画、彫刻は見たことがない。音の調整加工が大変だったからではないだろうか・・。」ということでした。確かに金属板で作られたものは、柔らかな金属(鉛と錫の合金)でもあり曲げたり削ったりすることが容易で、簡単な道具で微妙な音の変化を得られやすいが、木の場合は多少の時間がかかること、削りすぎると取り返しが効かないなどのデメリットがある。それより何よりも木を板状に加工するのことが、金属板作る事に比べたいへんな労力を要したこと、そのことがパイプを金属で製作した理由ではないでしょうか。

現代は様々な板が近所のホームセンターで簡単に手に入るし、中には中世の時代には考えられないような技術で様々な化粧を施した合板やパーティクルボードなども作られています。次回の制作にはそんな今風の板を使用したポルタティフオルガンを作ってみようかと考えています。

今後の予定

・来年2月ごろに小金井にて展示予定。

・「ロバの音楽座」にて制作ワークショップを計画予定。(詳細は未定)

 

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